私が看護師になるきっかけを作った小さな女の子

学生時代、たまたま整形外科に行ったときのこと。割と時間的余裕もあったのでのんびり行ったけど、いつものように受付を済ませて整形外科の待合のイスのところに行くと、何やらその場の様子がバタバタと慌ただしい。

整形外科の処置室をひっきりなしに出入りしている人たちは、救急隊員の人たちやら警察署の人たちやらと、病院関係者以外の人たちだった。待合椅子に腰かけながらそわそわしている様子の人たちとの間で交わされる会話も「お顔は見られましたか」とか、その言葉のいちいちからも何とも切迫した様子が伝わってきた。
どうやら私がここへ来る寸前に、誰か緊急で救急搬送されたんだなと憶測。救急隊やら警察関係の人が来ているところを見る限り、事故か何かがあって誰か運ばれてきた人がいたんだなという感じだった。そして待合で待機している人たちはその人の身内と思われる人たちだった。

何人か、その救急搬送された人の身内の人たちが集まる中、通常の外来患者だった私は普通に自分の名前が呼ばれるのを待っていた。するととなりにその身内の人の中の男性一人と、これまた小さな身内とおぼしきベビーカーに乗った赤ちゃんと2歳ぐらいかなという小さな女の子が待機中。もちろん全員知らない人たちだった。

その緊急搬送されたであろう人を巡って何かと慌ただしい空気の中、待機中のその男性は一人で二人の小さい子供を託されている様子だった。いつもと違う雰囲気に緊張しているのか、泣き声だけでは男の子か女の子かちょっと分からなかったけど、ベビーカーにいる方の赤ちゃんの方がうわーんと泣き続けていた。2歳ぐらいの女の子を私の隣の空いている待合椅子に座らせ、ベビーカーの方の泣いている赤ちゃんを懸命にあやす男性。どうにか赤ちゃんをなだめようとする男性の傍らで、今度は2歳児の子の方がお父さん私もかまって~と云わんばかりに泣き出しそうになるわで、お父さんも二人のちっちゃい子抱えて大変だなと察した。

ふと、私の隣にいた2歳の子がその小さな手を私のアウターを触り始めた。いつもと違う状況下で自分の隣に私という知らない人がいることが珍しいのか気になるのか、何度も何度も私のアウターにちょこちょこっと触ってきた笑。何をしてあげられるというわけでもないこともあって、それでその子が泣き止むならいいと思い、その子からのタッチに「ん~?」という感じでふふっとほほ笑みながら応じる私。むしろそのしぐさにはこっちの方が何だかちっちゃい子どもの純粋な温もりがあってほほえましかった笑。何度も私に触れようとして止まないその子なので、男性が私に「すみませんね~」と言っていた。もちろん子どものやることなので、怒りやしない私だった。

その子の目には涙が伝っていたのでせめて今持ってるハンカチで拭ってあげようとカバンを開けようとしたそのとき、緊急搬送のドアがサッと開いてさっきの救急隊の人が出てきては男性に何か言って誘導した。男性は赤ちゃんと2歳の子を連れて誘導されるままに待合室を去っていった。あのちっちゃい子の涙を拭ってあげることができなかったけど、知らない人ながら皆さんの無事を祈るような気持ちでご一同様の背中を見送らせていただいた。

私は直接そのお姿こそ見なかったけど今日運ばれてきた人のように緊急度の高い人からそうでない人、慢性的な症状の人まで、病院なんだからいろんな状態の人がいろんな形で来る。だからこそ命を預かる現場の重みというものを、その立ち合いをしている身内の方々や救急隊員の人などを間近で目の当たりにしながら、再実感したような出来事だった。

緊急搬送の一部始終など詳しくは分からないし知らない人たちだったけど、よく分からないなりにも切迫している状況なんだなということは傍目にも伝わってきた。私が看護師を目指したのは、これがきっかけだったように思う。そして私も母となり、あの時、私のおアウターを触っていた女の子と同じぐらいの年の娘を抱え、少しでも子供と一緒にいる時間が作れるよう、好条件求人を探す中、ふっとあの時のご一同様が無事だっただろうかと思い出したのだった。
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